夜森の温泉

ブラスター×デスペです。
まぁ、のほほんとした感じですかね?;
裸のお付き合いですが何の展開も無いです・・・。

少し冷やかな夜の森をやけに大きな重火器を背負った男が何かを探すように辺りを何度も確認しつつ、ゆっくりとした足取りで奥へと進んでいた。
男はこの大陸に多くいる冒険者の一人だとその装備から察しがつく。
背負う重火器は天界人の中でもランチャーと呼ばれる職を持つ者たちが愛用している武器のようだ。
武器を持ち歩いているものの彼の目的は狩りには無いようで特別警戒した様子もなくゆっくりと歩いていた。
黒く伸ばした髪をちょうど女性がするポニーテールの様な結び方をした髪を軽くかき男は一つため息をもらした。
黒い髪の間から覗く青い瞳が遠くを見ようと細められる。
「ぁっ!」
何かを見つけたようで男は一点を見つめ先ほどよりも少し急ぎ足で視線の先へと足を向けた。
たどりついたのは、この大陸で一部の冒険者達の間で話題になり始めている自然が作り出した温泉。
森の奥深くにある事から、武器も持たない一般の人が踏み入る事は出来ず最近まで人にしられず存在していたらしい。
それが最近急激に増えた冒険者に発見され話題になり始めていた。
ただの温泉ならそこまで冒険者たちの興味もひくことは無かったのだろう、この温泉で傷がすぐに癒えたと多くの冒険者達が語っているからこそ話題になっているのだ。
そんな彼も怪我を心配した友人からこの温泉を紹介されて探していた。
帽子に羽根飾りをつけた貴族出だと言う友人の感性は一般よりも少しずれていて、物事を大げさに表現する事が多いため彼の話が何処まで真実かはこの男事態も半信半疑で有るかも解らない温泉を探し森をさ迷っていた。
大げさに前ふりをし話し出す友人だが肝心の場所の情報は実に曖昧で男はずいぶんな時間歩いた様で服はすでに泥だらけになっていた。
彼の生活する古い貸家ではシャワーしか備え付けられておらず、効能よりもゆっくりと体を休め温まれる温泉につかっていたいと探していたため、彼は見つける事が出来ただけで満足して辺りに人がいないのを確認し、服を脱ぎにかかる。
ダンジョンでは無いとしても、無防備に武器も持たない冒険者を見つければ金めあてに襲う者がいるのも事実で男は服を脱いだ後、火薬が湿らないよう服に武器を包むとすぐに掴める岩の上に置く。
日に焼けた健康的な肌には多くの傷が生々しくのこっていた。
その中でも最近ついたであろう背中の大きな傷は酷く、重火器を常に背負い移動する彼には相当辛い傷でもあった。
『本当に傷の治りが良くなるのだろうか?』
期待を抱きながら、男はゆっくりと片方の足を温泉へと入れ様とする、のと同時に湯気の向こうに人影を確認した。
影はこちらに気づいていた様で男の方を見て立っているようだった。
「ぁ・・・」
声につられるようにシルエットが揺れた、湯気の中月の光を返す長く綺麗な金色の髪を確認する。
男は慌てて、シルエットに背中を向け焦りからかすれた妙な声が漏らした。
「すっすいません!覗くつもりはなかったんですすぐに場所を変えます!!本当にすいませんっ!」
女性の入浴を覗いた罪悪感と予期せぬ先客に男は完全に混乱していた。
後ろ手に服を掴もうと伸ばした手は堅い岩肌にぶつけ鈍い痛みを伝えた。
不意に先客の気配が徐々に自分へと近づくのを感じた男は更に慌て今にも裸で走りだしそうになった。
そんな男を止めたのは女性にしては低い声だった。
「勘違いするな俺は男だ」
可笑しそうに笑いを含んだ声でシルエットの主は男を止めた。
半分以上言葉の意味を理解しないままはじかれるように振り返った男の目に飛び込んで来たのは確かに女にして骨ばった体だった。
男が掴み損ねた銃を持ち主に向けながら金髪の男は口を開いた。
「人に背中を向けるのは危険だぞ?それも武器を持たないまま」
打つ気は無いようで引き金に掛けられた指は添えられているだけだった。
未だ整理がつかない頭で男は口を開くが言葉は出なかった。
「しかし、珍しいな大体女と勘違いしたら男は喜んで飛び込んで来るのに慌てて逃げようとしたのはお前が初めてだぞ?」
童貞かと付け加えながら相変わらず金髪の男は笑った。
ようやく整理が付いてきた頭で言われた言葉を理解した男が苦笑いを漏らした。
「女性だと思っていたのでまさか銃口を向けられるとは思ってませんでした、無防備な女性を襲うなんてとんでもないですよ」
返答に金髪の男は苦い笑みを浮かべる。
「女でもこの大陸では敵になり得る女だと油断している命がいくつあってもたりないぞ?」
言われた言葉に男は思い当たる事が有るようで一瞬何かを考えるような表情をつくりすぐに苦笑いを浮かべた。
「そうですね、貴方がその気なら私は殺されていましたしね」
銃を岩の上に戻し冷やかな岩が気持ちいのか金髪の男は岩にもたれながら相変わらずの笑みを浮かべていた。
「飛びかかってくれば俺の銃で撃ってやった物を」
クツクツと笑いながら隠し持っていたリボルバーを見せた。
良く使い込まれたリボルバーだった、いくつもの死戦を共に乗り越えてきたのだろう、丈夫な銃の表面にはいくつもの傷としみついたような血の跡があった。
「飛びかかって・・・私はそれほど理性の無い人間では、貴方は何度かここにきているのですか?」
金髪の男の発言からすると、どうも何度か女性と間違われ飛びかかって来た者がいるようだった。
金髪の男はいまだに岩に寄りかかりながら「あぁ」と小さく一言だけ答えた。
「この温泉は傷にいいと聞いたのですが、どうでしょう?」
あまり、頼りにもしていなかった友人の情報だが、やはりわざわざこんな場所に冒険者が訪れるくらいだ何かあるのかもしれないと少しの期待を込めて男は問うた。
「傷か?そうだな俺はよくここに来るがやはり傷の治りがいいと感じているからでもあるな」
言い終えた金髪の男は目の前の男を一見して小さく笑った。
「あんたいつまでそこに立ってるつもりだ?逃げるなり入るなりしたらどうだ?」
岩に隠れた男とは違い何も隠さずに立っていた男はふと自分の状況を思い返して妙に気恥しくなる。
「では、失礼してはいらせていただきますね」
「どうぞ」
笑いを含んだ声に押されように男はようやく温泉へと体を沈めた。
男は横で少しのぼせていたのだろう、未だに岩から離れない金髪の男に目をやり口を開く。
「私はビジュといいます」
突然の名乗りに金髪の男は一瞬驚いた表情を作ったがすぐに先程までの笑みを浮かべた。
「俺はグンジだ、よくここに来ている今度見かけても裸で逃げ出すなよ?」
人を馬鹿にしたような笑みだった。
それでもビジュは気にせず再び口を開く。
「貴方は何度か女性と間違われ飛びかかられた様にいっていましたが?」
ようやく冷えてきたのか温泉にゆっくりと体を沈めながらグンジはビジュを見る。
「理性も無くなった馬鹿ほどねじ伏せやすい者はいない」
残忍な表情が一瞬浮かんだのをビジュは見逃さなかった。
人をねじ伏せその上に立ちさらに登っていく、彼は戦いの中でしか生きていけない人種なのだろうと考えた。
「髪を伸ばしてるのもそのためですか?」
言われたグンジは自分の髪に指をからめ湯に泳がせた。
「そんな事のために伸ばしてはいない、あんたもここに来るつもりなら気おつけた方がいいぞ?俺ほどではないが男にしては長いようだしな?」
緑色の綺麗な瞳が細められビジュを見ていた。
「私は貴方ほどきゃしゃでもありませんし、がたいもいい方なので間違われることは無いとおもいますが?」
悪気もなく不意に出た言葉だったが、グンジはそれを挑発ととらえたようで眉がピクリと動いた。
「華奢だと?無駄に鍛えればいいってもんじゃないだろ」
言いながら細い腕が真っ直ぐにビジュへと伸ばされた、ビジュの腕をつかみ自分の腕と比べているようだった。
重火器を振り回すビジュの腕に軽いリボルバーを握るグンジの腕はずいぶんと細く見えた。
「そうですね、私も重火器を扱っていなければこんなに鍛えていなかったかもしれませんね」
自分よりも細いけれども、しっかりと筋肉がついた腕をみながらビジュは言った。
それが、気に入らないのかグンジは何も言い返すことは出来ないままビジュを睨んだ。
「ぁぁそうだ、私の友人も同じ様な事をいっていましたよ?無駄に筋肉がつき過ぎて美しくないとか、バランスのとれた自分の筋肉の自慢を4時間はきかされましたが・・・」
そう言いながら、自分の筋肉のバランスの良さをひたすらに語っていた変な友人を思い出しうんざりとした表情が自然と出てしまっていた。
「言っとくが俺はそこまでナルシストじゃないぞ」
眉間にしわを寄せたグンジの表情に思わずビジュは噴き出しそうになる。
「ぃぇ、けっして貴方がそういう人だとは思っていないのですが」
相変わらず眉間にしわを寄せながら見てくるグンジは又のぼせ始めているようで少し赤くなっていた。
男でありながら妙に色っぽい人だとビジュは不思議そうに首をかしげた。
「何だ?」
行動が気になったのかグンジは逆に不思議そうな表情でビジュの顔を覗く。
厳しい表情を浮かべている時は少し威圧感すら感じるのに、時折見せる柔らかな表情は確かに女性とは違う色っぽさを感じさせた。
「ぃぇ、なんでもありません」
男が言われて嬉しい言葉でも無いだろうとビジュはごまかすことにした、むしろ口にすればリボルバーを向けられかねないとさえ考えた。
だけども、ごまかそうとされた事が気に入らないのかグンジは不満げな表情でビジュを睨んだ。
「ぁっ!」
先程までとは違ってグンジは思いついた事に嫌そうな表情を作りビジュを見る。
「そうだ、先程言っていた友人だが」
突然の話の切り替えに一瞬何をさした言葉か理解するのに少し時間を要した。
「ぁぁ、はぃ?」
再びあの妙な友人が頭に浮かぶ。
「俺も、その様なやつに会った事があるんだが、そいつは羽付き帽子をかぶった金髪の男じゃないか?たしか仮面も付けていたと思うが」
嫌そうな表情を作りながら聞いてくるグンジの様子にあまりいい思い出では無いのだろうと察しながらも、友人を思い返すと関わってあまり良い印象をもつ事は出来ないかと苦笑いを漏らす。
それでも親しい友人になているのだから不思議な物だ。
「ぇぇ、恐らく同一人物だとおもいますよ?変わった人だったでしょう?」
伝えるのと同時にグンジの目は細められギラギラと光りビジュを睨みつけるように見ていた。
「あいつに会ったら伝えろ、今度俺の前に姿を現したら殺してやるとっ!」
最初は怒りを含んだ静かな声だったが言いながら徐々に言葉は力を帯び最後は怒りにまかせ叫ぶように告げられた。
「ぇ・・・はぃ・・・」
あんな友人である、人に呆れられる事や相手にされない事はよくあるが、人に強い怒りを与える様な姿はあまり見た事が無かった。
だからこそ一瞬驚いて何を言われているかビジュは理解できず気迫に負けつい返事をしていた。
返事をした後で目の前で怒りをあらわに震えるグンジの様子に少し不安を覚えた。
友人は人間としては面倒な分類ではあるが人に強い恨みを抱かせるような者ではないと信じていた。
「あの・・・彼が何か・・・?私は彼の友人ですし、何かあったのなら謝罪させますよ?」
同時にさらに殺気を帯びた目がビジュを睨みつけた。
「謝罪?あいつがそんな事をするたまか?」
言われた言葉にビジュは、おどけながら謝る友人が頭に浮かんだ。
これでは余計に怒らせてしまうだけだと茫然と考えた。
「何があったんでしょうか・・・?私は彼がそこまで人に恨まれる様な人間だとは思えないのですが」
グンジは口を開こうとして躊躇する。
次の瞬間には勢いよく立ちあがり無言で岩陰に置かれた軍服を着込み一歩森の方へと足を踏み出した。
あっけに取られ見ているだけだったビジュに振り返りグンジは口を開いた。
「理由は言えない、だがあいつだけは絶対に許さないっ!」
言い終えるとすぐに体を再び森の方へと向け今度は足を止めることなく闇の中へと姿は消えていった。
しばらくの時間茫然とグンジが消えて行った森を眺めていたビジュは体が十分にあったまった事に気付くと温泉を後にし、まっすぐに変わった友人の元へと足を運んだ。

今日出会った男の事を尋ねると変わった友人は、悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべた。
「ぁー、彼に会えたんだね、私に負けず劣らず美しい男だったろう?」
一部気になる表現があったがビジュはこんな友人の性格には慣れている、それには触れずに話を進める事にした。
「彼と何があったんですか?ずいぶん・・・怒っている様子でしたが?」
聞かれた事に対して男は思い当たらないといった様子で首をかしげた。
「怒っていた?彼がかい?」
本当に覚えが無いようで不思議そうにこちらの様子をうかがう友人に対しビジュは人違いだったのでは無いかと少し不安を抱いた。
だが、この友人は驚くほどに自信過剰であり自分中心的な考えを持つ、他人の迷惑にも気付いていない事が多い。
確信を持てずにビジュは質問を変えてみる事にした。
「彼と貴方は何を話しましたか?又何をしましたか?」
相変らず友人は不思議そうな表情で口を開いた。
「何って、彼の髪はほら私と違ってまっすぐで綺麗だろ?」
少し癖のある髪に指を通しながら友人に同意を求めるようにそう口にした。
「えぇ?真っ直ぐでしたね?」
友人が言おうとする事が解らずにビジュはおどおどとした様子で言葉を返した。
「だからね、綺麗な髪だと褒めただけだよ?」
友人が他人を褒めるなんて珍しい事もある物だと感心しつつビジュはそれだけでは男が怒る理由が解らず、友人を見る。
「それだけですか?」
「うん?髪を触ったりもしたね。」
聞きながらビジュはグンジの事を思い返す、彼はあまり人に触れられるのを好まないだろう、だけどもそれだけで人を殺す程人道は外れていない。
「いきなり銃口を向けられて少々驚きましたが」
笑いながらそう話す友人の言葉に、グンジの殺意がそこにあったのだろうかと不安になる。
「まぁ、殺気のないただの威嚇程度だったので気にはしませんでしたが」
友人は周りが迷惑している時でも気付かず自分の道をひたすらに進む癖に不思議とそういった物には鋭いのだ、たまに気付いていながら気付かないふりをしているのではないかとさえ考えてしまう。
「まぁ、私の様な美しい者に触れられては照れるのは仕方ないのだがね」
自慢げに話す友人をみて、その時のグンジの苦労を思いビジュはこの男の友人として彼に謝罪したい気持にもなった。
「なかなか素直になれない人の様だったので、緊張をほぐしてあげようと思ってキスをしたらいきなり発砲されてね?さすがに私も驚いて森に逃げ込んだよ?恥かしいからといって本当に撃つことは無いと思わないかい?」
ビジュは唖然とした、自信過剰だとは思っていたがここまでとは考えてもいなかった。
同時にグンジが殺意を抱いた理由も十分に理解し、彼の口から理由が述べられなかった事も納得した。
「彼は、服を着ると怒鳴りながら銃を構えて森へと消えていったんだけどね?」
友人は自分のキスが原因だとは考えもしていない様子だった、むしろこの男からしたら美しい私にキスをされたら喜ぶのが当然といった考えを持っている。
「それは恥じらいではなく、拒絶だと思いますよ」
呆れながらも淡々と語る友人に指摘して見たところで、彼は首をかしげた。
「拒絶この私にキスをされてそんな事をする者がいるわけがないだろ?」
何を言ってるんだい?そんな事を付け足す友人にビジュは頭痛を覚える。
「男にキスされて喜ぶ男なんていませんよ」
ビジュの言葉に心底驚いた表情で友人は口を開いた。
「私ほど美しい男にキスをされれば嬉しいのが当然だよ?ビジュは私にキスされたら拒むかい?」
「される前に撃ち殺しますよ」
ため息とともに伝えた言葉に友人は首をかしげて見せた。
「君は変った男だね?」
何も言い返せずに、ビジュはゆっくりと友人の家を後にした、自宅までの道をグンジの苦労と怒りを思いビジュは深いため息を吐いた。
「今度会ったら謝罪をしないといけませんね・・・・後、半殺し程度で許してもらえるようお願いしてみましょう・・・」
無理かも知れないと、頭の中で付け足しながらも、あんな友人でも自分にとっては大事な友人だと苦笑いを作る。

 

                                                                                                                                                      •  

♪あとがき♪
名前が色々とあれで読みにくくなってますね、すいません;x;
ちょっと次から名前を最初から決めれる様な描き方にしとこうと思った;;
内容ですが、取りあえず裸の相手を襲わないなんてランチャー(ビジュ)男らしくないぞっ!
レンジャー(グンジ)は結構挑発的で誘惑してるようにも(ry
彼はきっと温泉で襲われそうになっても全てを返り討ちにしてるのです、そしてあの変な友人(2次)に初めて唇を奪われた・・・。
あんな人だからこそ余計腹立たしいと思います(笑
2次は基本ナルシストすぎるくらいの変人だと思ってます(ぁ